第126回コラム 「商標の更新を忘れたらどうなるか―代理店による出願と権利濫用の攻防」
今回は、東京メトロ日比谷線・東西線「茅場町駅」9出口から徒歩約2分に鎮座する明徳稲荷神社(中央区日本橋茅場町1-6-3)をご紹介します。
同社は、創祀不明であるが、元禄時代より現在の茅場町交差点角に祀られ、関東大震災後の区画整理により、現地に奉斎されたとのこと(東京都神社名鑑)。



(筆者撮影)
今回は、令和5年(ワ)第70505及びその控訴審である令和8(ネ)10017を紹介します。
本事件は、製造元企業が長年使用してきた標章について、旧商標権が消滅した後、販売代理店が同一標章を無断で出願・登録し、その後、代理店は新たな商標権者として、製造元に対し使用差止請求を行うという、いわば“逆転攻防”の構図になった事件です。
経緯の概要は、下図1を参照下さい。

本事件から導かれるリスクと教訓を下記しますのでご参考にして下さい。
(1)商標管理を怠ると、代理店に“乗っ取られる”リスク
本事件では、製造元が長年使用してきた「ゴミサー」標章について、旧商標権が消滅した“隙”を代理店が突き、無断で同一標章を出願・登録しました。
裁判所はこれを商標権の権利濫用と判断しましたが、いったん出願・登録されてしまえば、紛争はほぼ不可避です。
教訓1:商標の更新管理は、ブランド防衛の最重要業務
(2)代理店・OEMとの関係では「商標条項の欠落」が最大リスク
判決では、代理店が製造元の信用を利用して販売していた事実を重視しました。
しかし、契約書には標章(商標)の扱いが明記されておらず、このため代理店側が「自分にも商標に関する権利がある」と誤認する余地が生じていました。
教訓2:代理店契約には必ず「商標の帰属」「出願禁止」「使用範囲」を明記
(3)権利濫用の抗弁は万能ではないリスク
商標権の権利濫用の抗弁は、信用の帰属や周知性などの事情が十分に認められる場合に限って機能します。
信用が弱い場合には、権利濫用の主張だけでは防御できないことが最高裁判例でも示されています。
(最高裁判例(商標権濫用の抗弁)最判平成29年2月28日(平成27年(受)1876号))
ただし、周知性が強い相手に対する権利行使は濫用となり得ます。つまり、ブランドの信用を蓄積していない企業は、権利濫用の抗弁で防御できません。
教訓3:商標に対する信用の蓄積活動(商標の表示数・表示範囲、費用等)の証拠を保存
以上


