第123回コラム 「意匠の類否判断について」
今回は、東京メトロ日比谷・都営浅草線「人形町駅」から徒歩約5分に鎮座する出世稲荷神社\岩代稲荷神社(中央区日本橋堀留町1-6-11)をご紹介します。
同社は、北条家浪人庄司甚右衛他数名の仮屋敷内に元和3年(1617)創建したと伝えられ、江戸時代初代市川団十郎が日参し名をあげたことから出世稲荷神社と称されるようになったとのこと。
岩代稲荷神社も合祀されています(境内掲示より)。




(筆者撮影)
今回は、意匠の類否判断の参考になる判決を紹介します。
本判決は、原審の東京地裁でも、控訴審の知財高裁でも非類似と判決された例です。
| 意匠権者:クレア株式会社 | 被告 ミツキ株式会社 |
| 意匠登録第1620963号 | (第1670712号) |
| 物品:ヘアキャッチャー | おふろのまとまる排水口カバー |
本物品は、風呂場の排水口等に設置し、毛髪等を受け止めるヘアキャッチャーです。
最初に、本件登録意匠、被告意匠、及び公知意匠を紹介します。
【本件登録意匠】

【被告意匠】

(出所:令和3年(ネ)第10075号 意匠権侵害差止等請求控訴事件判決)
【公知意匠】

地裁と高裁の要部認定を下表1にまとめました。
【表1】
| 観点 | 地裁判決(東京地裁) | 高裁判決(知財高裁) |
| 要部認定の結論 | 「渦流生成部が斜面体のみで構成され、斜面体を区切る構造体がない点」 | 地裁と同じ結論。ただし視覚的効果まで明確化。 |
| 要部の根拠 | ・公知意匠1〜4では渦状壁が存在し、斜面体のみ構成は公知でない ・需要者は渦流生成部に注意を向ける | ・公知意匠5により「凹凸の少なさ」は公知であると補強 ・斜面体のみ構成が新規性の中心である点を強調 |
| 要部の特徴の説明 | 「段差構造のみで境界が形成される」「斜面体を区切る構造体がない」 | 上記に加え、「全体として凹凸が少なくシンプルでスッキリした印象を与える」と美感の特徴を明示 |
| 控訴人の主張への対応 | 控訴人の主張(堰部は要部でない等)を簡潔に排斥 | 控訴人の主張(レビュー、公知意匠、凹凸の少なさ)を項目ごとに詳細に論破し、要部認定を体系的に補強 |
| 公知意匠の扱い | 公知意匠1〜4を中心に検討 | 公知意匠5(凹凸の少ない形状)を重視し、控訴人の主張を否定する論拠として活用 |
| 総合評価 | 要部=「斜面体のみ構成」 | 要部=「斜面体のみ構成」+「凹凸の少ないスッキリした美感」 |
3. 差異点の評価の違い
| 差異点 | 地裁の評価 | 高裁の評価 |
| 差異点1:堰部の有無 | ・堰部は斜面体の境界を明確化し、美感に大きく影響 ・本件意匠は平板であっさり、被告意匠は堰部で強調される | ・堰部は「容易に看取される高さ・幅」を持つ独立構造体 ・堰部により「より勢いのある水流」を想起させる → 美感の差異がより強調される |
| 差異点2:斜面体の数(6 vs 4) | 美感に影響するが決定的ではない | 要部の差異ほどではないが、全体美感の差異を補強 |
| 差異点3:斜面体の形状 | 三日月形 vs 鎌状 → 差異あり | 区画線の直線/曲線の違いを強調し、差異をより明確化 |
| 差異点4〜6:整流体・ピン・切欠き | 美感への影響は小さい | 同様に影響は小さいが、差異として積み上げて評価 |
意匠における類否判断の基本は、以下のステップです。
【Step 1】物品の性質・用途・使用態様の把握、比較、類否判断
本件では、ヘアキャッチャー → 排水口に設置 → 上方・斜め上から視認
→ 需要者は「渦流生成部」「捕捉部」に注意を向ける
【Step 2】公知意匠の把握(要部認定のため)
本件では、公知意匠1〜4:渦状壁あり、斜面体+渦状壁構成
公知意匠5:凹凸の少ない形状(渦状壁が上に出ない)
【Step 3】需要者が注意を惹かれる部分(要部)の認定
基本的構成態様
本件では、円形・灰皿状・捕捉部・フランジ → 公知
具体的構成態様
本案では、6斜面体・区画線・段差構造)→ 注意を惹かれる
【Step 4】共通点・差異点の抽出
本件では、
公知(共通点):円形・捕捉部・渦状模様・凹凸の少なさ(公知意匠5)
新規(差異点):斜面体のみで構成され、区切り構造体がない点
【Step 5】要部を中心に全体の美感が共通するかを判断
本件では、区切り構造体の有無によって非類似
以上、ご参考にして下さい。
以上


